日本軍は日露戦争でも、日本軍の戦死者よりも先にロシア軍の戦死者を祀っています。支那事変でも、敵兵の戦死者を祀ることを忘れませんでした。何よりも東京大空襲に来て墜落して亡くなったパイロットをも祀っています。
大東亜戦争が終戦を迎える1945年の4月12日に、日本と戦っていたアメリカのフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領が脳卒中で突然他界しました。
当時日本は敗戦濃厚で、3月10日には東京大空襲で民間人の死者が10万人に及ぶ大被害を被っていた頃です。
ルーズベルト大統領は、日本を戦争に導き、ABCD包囲網など日本を破滅に追いやった張本人でした。
当然、同じ様にアメリカと戦っていたドイツのヒットラーは、ルーズベルト大統領の死に際し、ラジオ放送を通じ、「運命は歴史上最大の戦争犯罪人ルーズベルトをこの地上より遠ざけた」などと罵詈雑言を浴びせます。
しかし、日本の鈴木貫太郎首相の取った行動は、それとは対照的でした。
同盟通信社の短波放送を通じて以下のような談話を発表します。
「米国側が今日、優勢であるのは、ルーズベルト大統領の指導力によるものである。であるから私は、大統領の死が米国民にとって非常な損失であることが理解出来る。ここに私は深い哀悼の意を米国民に表明する次第である。しかし、氏の逝去によって、貴国の日本に対する戦争継続の努力が変わるとは考えていない。我々も、米英のパワーポリティックスと世界支配に反対する全ての国家の共存共栄のため、戦争を続行する決意をゆるめることは決してないであろう。」
戦争相手国の元首の死に弔意を表わすという、欧米では考えられないこの行為に対し、15日のニューヨーク・タイムズは「JAPANESE PREMIER VOICES "SYMPATHY" (日本の首相、「弔意」を表す)」という見出しで、驚きを持って報道しています。
また、アメリカに命していたドイツの作家トーマス・マンは、BBC放送で、「東洋の国日本にはなお騎士道精神があり、人間の死への深い敬意を品位が確固として存する。」と日本を讃えています。
英国BBCで以下の如く声明を発表、鈴木貫太郎総理の武士道精神を称賛し、総理の言葉は戦時下の世界に感銘を与えたとされます。
「ドイツ国民の皆さん、東洋の国日本にはなお騎士道精神があり、人間の死への深い敬意と品位が確固として存する。鈴木首相の高らかな精神に比べ、あなたたちドイツ人は恥ずかしくないですか」
鈴木貫太郎は、日清日露戦役歴戦の軍人(海軍大将)であり、
彼が固辞できずに総理についた時には、すでに帝都東京は、アメリカ軍の戦略爆撃機B29の大編隊によって、連日猛爆撃に晒されていた。
しかもその爆撃目的は、東京の銃後の婦女子と老人を焼いて大量に殺戮することであった(焼夷弾という民家を焼く爆弾)。
そして、その殺戮は、ルーズベルト大統領が死去した日も翌日も翌々日も、あたかもルーズベルトの意に報いるかのように続けられていました。
鈴木貫太郎首相は、この爆撃が続く真っ只中で、この爆撃の最高司令官の死の報に接し、世界とアメリカ国民に哀悼の意を表したのです。
例え敵であろうとも、自国のために尽くした人間に対する高い尊敬の意と、その人物の死に触れて、その国の国民の感情を思いやる気持ち、戦時中においても日本人は決して忘れていませんでした。